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卒業生インタビュー!

学生が気になる卒業生・修了生にインタビューしました。

仕事場に訪れいろいろ質問しています。

陶磁

金工

 

漆・木工

 

染織

 

黒田 茜 Akane KURODA  

H25年度 工芸科染織コース卒業

H25年度 工芸科染織コース卒業

ケイ・ウノ プロデュース科 製造部 CAD係

Interviewer: 渡邉美咲 (H24入学)

──今の仕事はどんな仕事ですか。

 

ケイ・ウノというオーダーメイドジュエリーの製造から販売まで手掛ける会社に勤務しています。お客様の商品を実際に作成する部署である「製造部」に所属しており、中でもCADを担当しています。デザイナーが描いたデザイン画を、立体で作成するための設計図を作る部署です。デザイナーと職人の橋渡しをする仕事なので、様々な部署の人と関わることができ、また、ものづくりの根幹に携わることもできるので、大きなやりがいを感じます。

 

 

──今の仕事に至る経緯を教えて頂けますか

 

ケイ・ウノを受けようと思ったきっかけは、大学の掲示板で募集を知り、オーダーメイドという事業に強く興味を持ったことです。私は工芸科の染織コースを卒業し、大学院ではファッションの勉強をしてきました。主に日本のファッションビジネスを学び、洋服の造形美や美しい面ばかりでなく、お金の事やマーケット、リアルクローズがなんたるものかという事を、実際にファッション業界で働かれていた先生方から学びました。それまでは、「将来は洋服のデザイナーズブランドに行きたい」という憧れの気持ちが大きかったのですが、ファッションビジネスについて深く学んだことで、自分が大好きなファッション業界で「働く」ということについて、憧れではなく現実的に自分に向いているのかを考えるようになりました。
 大学院時代は勉学だけでなく、ベルギーのゲントへ留学へ行ったりと、様々な経験をしました。そうした生活の中で、やはり自分は装いや洋服等の身につけるものが好きなのだと再認識したものの、いざ将来のことを考えると、流行の変化も人の出入りも早いこの業界で働きたいのか、正直迷ってしまったんです。ファッションは好きですが、流動的なものを扱うって、なんだか少し寂しい気がして。
 そんな中出会ったのがケイ・ウノでした。ジュエリーというファッションに関わるアイテムでありながら、オーダーメイドという他にはないビジネスモデルを展開することで、お客様が最大限に喜んで下さる商品を提案できるところに大きな魅力を感じました。ここなら、流行廃りに動じることなく、一生の宝物となる商品を作り出すことができると思ったんです。

 

 

大学院ではファッションの勉強をされていましたが、ジュエリーについては勉強していたのですか

 

内定が出るまで、全くの素人でした。ジュエリーのことなど、全く知らない状態でしたね。内定後の会社からの課題で、ジュエリーの歴史や金属、宝石の知識などを学び始めました。実際にジュエリーショップに足を運び、接客を受けレポートを書くなど、市場を知ることもその一つです。知らない世界に足を踏み入れるという感じがして、とても新鮮でした!自分はお金もないし、学生だし、どんな顔して入ればいいのか正直びくびくで。笑
でも、知れば知るほどジュエリーの奥深さにはまっていく自分がいて、もっと知りたい!という気持ちが大きくなりました。深い知識を得ることで、加工をする際により良い視点を持って仕事が出来ますしね。

 

 

─では今の仕事と私生活についてお伺いします。仕事場はどんな感じですか

 

工房ではワンフロアに150人くらいの人が働いています。雰囲気は現場!という感じです。アットホームな雰囲気で、とても仕事しやすい環境だと思います。

 

 

──仕事以外のお時間はどのように過ごしていますか

 

仕事後の時間や休みの日は、たくさんの人と会う事を心がけています。私は学生時代、もっぱら制作に打ち込んでいました。人間関係が狭くなりがちで、ずっとこれでいいのかな、と思っていたので今それを解消している感じです。最近は高校の同級生とかに会いに行っていて、公務員や生花店勤務、外資系やシステムエンジニアなど、美術やものづくりの仕事以外の人と会うことで、世の中にはいろんな人がいるなと感じますし、刺激になって楽しいです。

 

 

──仕事をしていく中で学んだことや意識していることはありますか

 

お客様が一生身につけるジュエリーを作っている、ということを忘れないことですね。どの仕事にもいえることかは分からないのですが、もの作りでも仕事となると、どうしても「作業」になりやすいと感じています。学生のときとは違い、お金と時間等が関わってくるので効率よくこなしていく事は重要ですが、そこに集中するがあまり「作業」になりがちなんです。でも、作業になってしまうとだめなんです。
私の仕事はパソコンの画面上で設計図のデータを作成するのですが、目的を「データを作る」ということに置き、作業として仕事をしてしまうと、どんなに数値的に美しいデータが作れたとしても、完成形のジュエリーは完璧ではない、という場合があります。ジュエリーは、設計図を基に型を作成し、金属にし、表面の加工をし、仕上げていきます。そうした加工をする工程を想像したデータ作成をしなければなりません。例えば、表面をきれいにするため、工具で磨いていく作業を行います。そうすると金属は僅かながら削れていきます。その削られる金属量も加味したデータを仕上げていく必要があるんです。データとして美しいものにするのではなく、加工を加味し、最終的にお客様の理想とするジュエリーを仕上げることができるデータが、完璧なデータだと言えるのです。だからこそ、作業とするのではなく、お客様が身につける宝物を作っているのだということを想像し、仕事をしています。

 

──今後のビジョンなどはお考えですか

 

はい、今のジュエリーの仕事でさらにスキルアップしたいと考えています。また、今私が勤めている会社が新規事業で取り組んでいる、アパレルの分野にいきたいというのもあります。オーダーメイドでジャケット、スーツ、靴などを作っている部署です。オーダーメイドの洋服、というのは、ファッション好きの私にとってとても魅力的で、自分もそれをやりたい!というのは、度々上司にアピールしています。笑

 

 

──今の話の中でもアパレルのオーダーメイドが魅力的とおっしゃっていました。オーダーメイドはお好きなんですか
 

オーダーメイドのシステムが好きです。オーダーの服を買いにくる人って、ファストファッションの服を買いに来る人とはまた印象が違いますよね。ものを厳選し、自分だけの一着を、と買いにこられる方がほとんどです。私も、自分にとって良いものを厳選して、ずっと大事にしていきたいと考えているので、とても共感しています。そういう部分では、大学院はファッション科でしたが、根っこの方では工芸科だったのかな、なんて思いますね。
まだ勤めて2年目ですが 、会社で仕事をしていて一番やりがいがあることは、私たちが作ったジュエリーを、お客様が大事に身につけてくれているということです。既製品でも大切にしていただけるとは思いますが、オーダーメイドだからこそ、お客様も、作る職人も込める想いが違うと思うんです。そうした「人に喜んでもらえる」という部分は私が学生の頃に志し、ファッションや被服の分野で実現したいと思っていたことだったので、とても嬉しい、やりがいのある仕事だなと感じています。

 

 

──自身の学生生活について、なにかやっておけばよかったことや、やっておいて良かった事等はありますか

 

やっておけばよかったことは、休学と留年ですね。笑 贅沢だとは思いますが、やはり自分の好きなこと、やりたいことに時間を費やせるというのは、幸せなことだと思いますし、正直、やりたいことが多すぎて時間が足りなかったように感じます。
やっててよかったことは、アルバイト、留学、学生イベント等、自分から参加をしていたことです。大学での制作活動に打ち込みすぎると、それこそ人と関わることが少なくなってしまうので、こうした学校外の活動は人と関わる機会を作れた場だったと思います。ただ、どのコミュニティーも地域柄なのか同じ美大生がほとんどだったので、狭く深くの関係性が築けた反面、偏ってしまっていたようにも感じるので、ぜひこれから金沢美大で学生生活を送る方には、いろいろな世代、価値観を持った人と関われる場も作ってほしいなと思います。

 

 

──金沢美大の欠点や利点はありますか?

 

 

利点は、ものづくりをする学生にとても寛容なところです。例えば、学校の開放時間。制作活動に没頭していると、朝早くから取り組みたかったり、いつの間にか夜遅くなっていたりとあったのですが、常に学校という制作活動の場を開放してくれていました。時間に捉われずに作業に没頭できるのはとてもありがたかったです。あとは、小規模の大学だからこそ、先生や先輩、同級生、後輩との距離が近いということです。大学を歩いていても、知っている人、見たことある人しかいない、みたいな。アットホームで深い関係性を持ちながらも、切磋琢磨しあいながらものづくりに励むことができる所も、利点だと思います。
欠点というか、もっとこうだったらと思うのは、地域の人に開かれていない点ですかね。大学敷地内で学校外のかたをほとんど見ませんでしたが、卒業してから色んな人から話を聞いていると、大学とはそういう所じゃない様ですね。せっかく金沢という良い街にあるので、もう少し外に向けて開くような取り組みがあっても良いのではないかと思います。

 

 

──学生にエールなどあればお願いします

 

仕事をしてお金を稼ぐようになると、思うように休めなくなります。私が社会人になってからもらった最長の連休は現段階では3日間でした。学生のうちの春休み夏休みは長いですよね。休学だってやろうと思えば出来るし、学生のうちはぜひ自由に時間使って欲しいと思います。

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